脂質異常症

 

動脈は、心臓から送り出された血液を全身に運ぶ血管です。酸素や栄養を運ぶ役割を担っており、健常な血管は弾力性があってしなやかですが、加齢やさまざまな危険因子によって硬く、厚く、狭くなります。これが動脈硬化です。血管が閉塞すると、臓器や組織は細胞が壊死を起こし、心臓であれば心筋梗塞を、脳であれば脳梗塞を発症します。

動脈硬化は、加齢・喫煙・脂質異常症・高血圧・飲酒・糖尿病・肥満・睡眠時無呼吸症候群などの危険因子が重なることによって発症しやすくなりますので、食事や運動習慣などを見直し、必要な場合は生活習慣病の適切な治療を継続していくことが大切です。

 

血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール:LDL-C(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール:HDL-C(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド:TG(中性脂肪)の血中濃度の異常があり、動脈硬化と関連します。

←脂質異常症診断基準

 

*基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とします。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可です。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とします。

**スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域高non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮します。

 

・LDL-CはFriedewald式(TC-HDL-C-TG/5)(ただし空腹時採血の場合のみ)。または直接法で求めます。

・TGが400mg/dL以上や随時採血の場合はnon-HDL-C(TC-HDL-C)かLDL-C直接法を使用します。ただしスクリーニングでnon-HDL-Cを用いる時は、高TG血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価します。

・TGの基準値は空腹時採血と随時採血により異なります。

・HDL-Cは単独では薬物介入の対象とはなりません。

脂質異常症のスクリーニングでは、動脈硬化性疾患リスクに応じたカテゴリー分類として、久山町研究のスコアにもとづく絶対リスクを用いたフローチャートが示されました。

 

冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞の既往あり→二次予防

糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患あり→高リスク

それ以外→久山町研究によるスコアでリスク分類

久山町スコアによる動脈硬化性疾患発症予測モデル

リスク区分別脂質管理目標値

 

TG:空腹時150未満、随時175未満

 

HDL-C:40以上

 

LDL-C:

 

二次予防は100未満。

「急性冠症候群」、「家族性高コレステロール血症」、「糖尿病」、「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は70未満

一次予防のうち

高リスクの場合は120未満

そのうち糖尿病がある場合、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100未満

中リスクの場合は140未満

低リスクの場合は160未満

脂質異常症の治療

 

一次予防においては原則として3〜6か月間は生活習慣の改善を行ってその効果を評価した後に、薬物療法の適用を検討します。しかしLDL-C 180mg/dL以上が持続する場合は、生活習慣の改善とともに薬物療法を考慮します。

 

生活習慣の改善として、禁煙、受動喫煙を回避する、多量飲酒を避けることです。また肥満症やメタボリックシンドロームの治療の基本は、生活習慣の改善により、過剰な体重および内臓脂肪を減少させることです。

 

運動療法として、1日合計30分以上を週3回以上(可能であれば毎日)、または週に150分以上の中等度以上の有酸素運動、またレジスタンス運動(筋力トレーニング)が推奨されます。有酸素運動および身体活動量の増加、座位時間を減らすことは動脈硬化性疾患の予防効果があります。

 

 

脂質異常症における食事療法のポイントは以下のとおりです。

過食を抑えて適正体重を維持します。

食物繊維の多い食品(玄米、七分づき米、麦飯、雑穀、納豆、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく)を増やしましょう。

エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸の多い青背の魚や、n-6系多価不飽和脂肪酸の多い大豆を増やしましょう。

飽和脂肪酸(脂身のついた肉、ひき肉、鶏肉の皮、バター、ラード、やし油、生クリーム、洋菓子)や、工業的に作られたトランス脂肪酸の多い食品(マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子)は控えましょう。

高LDLコレステロール血症の方は、コレステロール摂取量を1日200mg未満に抑えることが推奨されています。卵類、肉類、魚肉の内臓などはコレステロールを多く含みますので、これらの過剰摂取は避けましょう。

(一般的には、冷蔵庫の中で固まっている油脂は、飽和脂肪酸の多い油脂であることが多く、サラダ油や魚油のような液体の油は、不飽和脂肪酸の多い油脂であることが多くなっています。)

糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控えましょう。

ナッツ類を適度に食事に取り入れます。

アルコールはできるだけ控えます。

食塩の摂取は6g/日未満を目標にし、血圧上昇をおさえましょう。

基本的には、日本食(魚、大豆、野菜、未精製穀類、海藻を十分に、乳、果物、卵を適量に、肉の脂身、バター、砂糖・果糖を控える。ただし減塩で食べる)を意識しましょう。

 

 

脂質異常症治療における薬物療法の原則

まずLDL-Cの管理目標値達成を目指した薬物療法を実施します。次にnon-HDL-Cの達成を目指します。

LDL-Cの管理目標を達成してもnon-HDL-Cが高い場合は、高TG血症を伴うことが多く、その管理が重要となります。

低HDL-C血症単独に対する薬物療法の有用性は確認できていないため、基本的に生活習慣の改善で対処するべきです。

冠動脈疾患の二次予防においては、治療開始前のLDL-Cに関わらず、発症早期より最大耐用量のストロングスタチンを第一選択にした薬物療法が推奨されます。

 

←脂質異常症患者に対する薬物療法で用いられる薬剤は、10のカテゴリーに分類されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

参照・引用先:

動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版

動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版

The Japan Diet(日本動脈硬化学会 )

e-ヘルスネット 脂質異常症、脂質異常症の食事


食事と運動

目標とするBMIの範囲  (「日本人の食事摂取基準(2020年)」厚生労働省より)

年齢(歳) 目標とするBMI(kg/m2)
18~49 18.5~24.9
50~64 20.0~24.9
65~74 21.5~24.9
75以上 21.5~24.9

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

18.5未満がやせ、18.5以上25未満が標準、25以上が肥満と判定します。

 

 

動脈硬化疾患予防のための食事療法(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より)

1. 過食に注意し、適正な体重を維持する

・総エネルギー摂取量(kcal/日)は、一般に目標とする体重(kg)×身体活動量(軽い労作で25~30、普通の労作で30~35、重い労作で35~)を目指す。

2. 肉の脂身、動物脂、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える

3. 魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する。

・脂肪エネルギー比率20~25%、飽和脂肪酸エネルギー比率を7%未満、コレストロール摂取量を200mg/日未満に抑える

・n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす

・トランス脂肪酸の摂取を控える

4. 未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、階層、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす

・炭水化物エネルギー比率を50~60%とし、食物繊維は25g/日以上の摂取を目標とする

5. 糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える

6. アルコールの過剰摂取を控え、25g/日以下に抑える

7. 食塩の摂取はg/日未満を目標とする。