肥満症治療薬
*ウゴービ皮下注(GLP-1受容体作動薬)
肥満症治療の基本は食事・運動・行動療法ですが、食事・運動療法だけでは目的達成(減量)が難しいことが多いです。そのような状態で有効な治療法の選択肢のひとつにGLP-1受容体作動薬があります。
食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンをインクレチンといい、GIP (グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド) とGLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1) があります。
GLP-1は、高血糖時にインスリン分泌を促進し血糖値を下げる、摂取した食物の胃からの排出を遅らせて満腹感が持続する、中枢神経系に作用し食欲を抑えるなどの働きがあります。
ウゴービの主成分セマグルチドはGLP-1と似た作用を持ち、食欲を抑制し、エネルギー摂取量や食べ物の好みを変化させて体重を減少させます。
(セマグルチドを主成分とする薬には、ほかに糖尿病治療薬のリベルサスやオゼンピック皮下注があります。またGIP/GLP-1受容体作動薬にはマンジャロ(チルゼパチド)などがあります。)
投与の対象となる方
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られていない肥満症の方
①BMIが35以上
②BMIが27以上で、2つ以上の肥満に関連する健康障害がある方
健康障害とは・・・耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患 (変形性関節症、変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病
※BMI(BodyMassIndex)=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
(医師の判断でBMIが27以上でなくても、肥満による健康障害のある方に処方することもあります。)
対象とならない方
・妊娠中、2ヵ月以内に妊娠予定の方、授乳中の方
・膵炎の既往歴のある方
・甲状腺疾患のある方(とくに甲状腺髄様癌の既往のある方)
・重度の胃腸障害がある方
・20歳未満の方
・糖尿病治療中の方
・重度の胃腸障害、重度の肝機能・腎機能障害のある方
・摂食障害と診断されたことがある方
・多発性内分泌腫瘍症2型の人
・脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
・過度のアルコール摂取者
・ご高齢の方
治療により期待される効果
日本人・韓国人の肥満症患者さんでは、食事・運動療法に加えたウゴービ®週1回68週間の治療により、平均13%の体重減少効果が確認されました。また内臓脂肪の減少、体重減少、腹囲の減少が確認されました。
ウゴービの副作用には、消化器症状(悪心・嘔吐・下痢)や低血糖、稀ですが急性膵炎、胆のう炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸、視神経症などがあります。
医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
ウゴービ自費診療の料金について(1ヶ月ずつのご購入)
用量 価格(税込)
0.25mg MD (4週分) 16,500円
0.5mg MD (4週分) 22,000円
1.0mg MD (4週分) 33,000円
1.7mg MD (4週分) 41,800円
2.4mg MD (4週分) 52,800円
※注射針込みの価格です。個装箱などにより遮光し、凍結を避け、冷蔵庫(2~8℃)に保管してください。
※初診料2,200円、再診料1,100円が別途必要です。
※注射薬の在庫確認のため、初診の際は事前にご連絡下さい。
ウゴービは毎週同じ曜日に1回投与する治療法です。
週1回0.25mgから開始し、徐々に漸増し、維持用量は週1回2.4mgです。
自己注射ができるように開発されたペン型の注入器で注射します。
診察は毎月行い、減量効果や副作用がないかを確認しながらmg数を調整します。
保険診療で肥満治療を行う場合、専門医療機関にご紹介いたします。(最適使用推進ガイドラインにより保険診療でウゴービを使用できるのは、大学病院や基幹病院に限られます。)当院では適応を満たす方に限り肥満治療を自費診療で行います。
※糖尿病のある方は、糖尿病治療薬を使用し保険診療での治療を行います。
※美容・ダイエット目的での治療は行っておりません。
参考:
「肥満」
肥満は、体重が多いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態です。BMI18.5未満が低体重、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満に分類され、さらにBMIが35以上になると高度肥満に区分されます。
世界保健機関(WHO)の基準では、BMI 25以上をoverweight(過体重)、BMI 30以上をobesity(肥満)としています。しかし、20歳以上の日本人でBMI 30以上の人の割合は、男性4.7%、女性3.9%(2024年のデータ)と少なく、BMI25以上30未満の人でも普通体重の人に比べて高血糖、高血圧、脂質異常症を発症しやすいことから、日本における肥満の判定基準はBMI 25以上と定義され、20歳以上の男性32.4%、女性19.3%(2024年)が該当します。
「肥満症」
肥満(BMIが25以上)で、肥満による11種の健康障害(合併症)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に「肥満症」と診断され、減量による医学的治療の対象になります。BMIが35以上の場合、高度肥満症となります。
2025年12月世界保健機関(WHO)は、慢性的で再発性疾患である肥満を治療するためのGLP-1療法(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬)の使用に関する初のガイドラインを発表しました。この中でWHO は、GLP-1療法を条件付きで推奨し、食事療法・運動・行動療法を組み合わせることを強調しています。特に「intensive behavioral therapy(IBT)」=集中的生活習慣介入を推奨しています。
GLP-1中の食事療法を具体的にまとめた論文の一つとして以下のものがあります。
Nutritional priorities to support GLP-1 therapy for obesity: a joint Advisory from the American College of Lifestyle Medicine, the American Society for Nutrition, the Obesity Medicine Association, and The Obesity Society
Mozaffarian D, et al. The American Journal of Clinical Nutrition. 2025 May 30;122(1):344–367.
GLP-1療法を効果的にサポートするための主な食事推奨事項
| 推奨される要素 | 最小限にする/避ける要素 |
|---|---|
| 食品群 | |
| 果物(例:ベリー類、りんご、柑橘類、バナナ、ぶどう、アボカド) | 精製炭水化物(加工穀物、小麦粉、添加糖) |
| 野菜(例:ブロッコリー、葉物野菜、トマト、にんじん、えんどう豆、かぼちゃ類) | 砂糖入り飲料 |
| 全粒穀物(例:オートミール、キヌア、玄米、全粒粉パン、シリアル、パスタ) | 赤身肉・加工肉 |
| 乳製品(例:ヨーグルト、牛乳、チーズ) | ほとんどのファストフード |
| 脂肪の少ないたんぱく質(例:鶏肉、魚介類)および卵 | 甘いスナックや塩味スナック |
| ナッツ・種子類(例:アーモンド、ピーナッツ、チアシード、ごま、ヘンプシード) | |
| 植物性脂肪・油(例:オリーブ油、キャノーラ油、アボカド油) | |
|
生姜茶またはペパーミントティー
|
|
| 食習慣 | |
| 規則正しく、少量の食事を一定時間ごとに摂る | 感情的・無意識・夜間の飲食 |
| 食品選択に柔軟性を持つ | 長時間食べないこと(極度の空腹状態になること) |
| 適量を守った“ご褒美”的なおやつを楽しむ | 大量の食事 |
| 十分な水分補給 | |
| アルコール摂取を最小限にする |
注記
栄養に関する推奨とカウンセリングは、体重減少を支援し、胃腸の副作用を予防・軽減し、筋肉や骨量の減少を抑え、長期的な体重維持を支えるために重要です。管理栄養士は、個人の栄養目標や食事の必要性・好みに合わせた食事パターンを決定するのに役立ちます。
長期的な体重維持に関連する追加行動には、以下が含まれます:
定期的な身体活動(1日60分以上)
体重・食事摂取・活動量の自己モニタリング
スクリーンタイムを制限する(週10時間未満)
社会的支援、事前計画、問題解決スキルなどの対処戦略を活用すること