大腸がん検診

部位別予測がん罹患数(2024年)【出典:がんの統計 2025、大腸がんファクトシート2024】

日本では年間15万人以上が大腸がんと診断され(全体の15%前後)、最も多いがんです。男女別ではそれぞれ二番目に多いがんです。

日本人が一生のうちに大腸がんと診断される確率は、男性10.3%、女性8.1%です。

悪性新生物<腫瘍>の主な部位別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移

【出典:令和5年(2023)人口動態統計、大腸がんファクトシート2024】

 

日本では年間5万3千人以上が大腸がんで死亡しており(がん死亡全体の13.8%)、肺がんに次いで2番目に多いです。女性では最も割合が高く、男性では二番目に多い部位です。

(大腸は、結腸と直腸S状結腸移行部及び直腸を示します。昭和42年(1967年)までは直腸肛門部を含みます。)

 

 

 

大腸は消化管の最後尾にある1.5mから2mの長さの臓器で、主な仕事は水分を吸収して便の形を作ることです。1日最大6Lの水分を吸収できるとされています。

 

大腸がんは早期のものは無症状ですが、進行すると症状が出現することがあります。

 

右側大腸(盲腸から横行結腸まで)では、腸の中は液状であり、症状が出るとしても貧血や軽度の腹痛にとどまることが多いです。進行するとしこりで発見されることもあります。一方左側大腸(下行結腸から直腸)では、便が固形となり腸管腔が狭くなるため通過障害をきたす頻度が高くなり、排便習慣の変化(便秘、下痢)、腹痛や嘔吐の症状が出ることがあります。また肛門に近い腫瘍では血便や便柱狭小化をきたすこともあります。

【出典:国立がん研究センターがん情報サービス】

 

大腸の検査

①便潜血検査免疫法

便を2日採取し、腫瘍からの微小な出血を検出します。食事制限や薬剤制限は不要です。

日本では1992年より40歳以上を対象に大腸がん検診として実施されています。陽性となった場合、大腸内視鏡検査による精査が必要です。

有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版で、便潜血検査免疫法の推奨グレードはAです。検診対象は40-74歳を推奨しますが、45歳または50歳開始も許容されます。検診間隔を1年から2年にすることも可能です。採便回数は1回法、2回法どちらでも可能です。

②大腸内視鏡検査

肛門から内視鏡を挿入し、一番奥の回盲部から直腸まで観察します。病変を採取して病理検査に出したり、前がん病変であるポリープや早期の大腸癌の切除もできます。ただし、前処置として腸管洗浄剤や下剤の服用が必要です。

有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版で、全大腸内視鏡検査の推奨グレードはCですが、精密検査・診断方法としての重要性は変わりなく、大腸がんの診断に不可欠の検査です。

③注腸検査

肛門から細い管を挿入して造影剤と空気を入れて、大腸内をX線で撮影します。手術前や内視鏡検査ができない場合に行われることが多いです。

④大腸CT検査(CT Colonography)

肛門から専用の炭酸ガスを注入し、大腸を膨らませた状態でCTを撮影します。大腸の内側の病変を調べ、大腸の病気の発見から転移の診断まで行うことができます。大腸腫瘍が見つかった場合、大腸内視鏡検査が必要です。

⑤その他には、カプセル内視鏡、PET-CT検査、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)などがあります。

【出典:有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版、国立がん研究センターがん情報サービス】

年齢階級別がん罹患率推移(1980年、2000年、2020年)

【出典:がんの統計 2025】

大腸がんは40歳代から増加し、年齢が高くなるほど罹患率が高く、また中高年の罹患率は増加しています。

大腸がんの年齢調整死亡率の国際比較 年次推移

【出典:大腸がんファクトシート2024】

 

日本は世界的にみると、罹患率、死亡率とも高いのが現状です。大腸がん死亡率の経年変化の国際比較をみると、日本では1980年代はアメリカなどと比べて死亡率が低かったものの上昇傾向で、1990年代には諸外国と同じ水準に達し、その後男女とも減少していますが諸外国より減少が鈍いため、直近では最も高い水準となっています。

理由として、日本での大腸がん検診受診率が低いことに加えて、精密検査としての内視鏡検査の受診率が低いことも要因として考えられます。

がん診療連携拠点病院等(都道府県推薦病院含)における5年実測生存率(2014~2015年診断例)

【出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」】

 

実測生存率は、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。大腸がんが完治しても、ほかの病気で5年以内に亡くなる場合を含みます。

病期Ⅰ期:83.1%、Ⅱ期:75.6%、Ⅲ期:68.7%、Ⅳ期:17.0%です。

がん診療連携拠点病院等(都道府県推薦病院含)における5年ネット・サバイバル(2014~2015年診断例)

【出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」】

 

ネット・サバイバルは、純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算する方法です。大腸がんが完治し、ほかの病気で5年以内に亡くなる場合を含みません。

病期Ⅰ期:92.3%、Ⅱ期:85.5%、Ⅲ期:75.5%、Ⅳ期:18.3%です。

大腸癌の予後は比較的良好で、早期発見・治療のメリットは大きいと考えられます。早期の大腸癌では、自覚症状はほとんどないので検診を積極的に受けることが重要で、また気になる症状があれば大腸検査を受けましょう。

生活習慣に関連する大腸がんのリスク低下/増加因子

【出典:大腸がんファクトシート2024】

 

リスク要因を避け、予防的行動をとるよう生活習慣を改善することで大腸がんのリスクを下げられる可能性があります。具体的には、たばこを吸わない、飲酒をしない、適度な体重を保つ、運動する、です。

食事については、国際的には、赤肉・加工肉を食べすぎないこと、全粒穀類や食物繊維を含む食品、乳製品、カルシウムサプリメントを摂ること、が推奨されています。しかし、日本人にとって、どのような食事が大腸がんのリスクや予防効果があるのかはまだ可能性の域を出ていません。